おかわり

毎日繰り返しができない人。たべたりのんだりねむったり。まるでだめなおたく

生命の力強さ

催し物でチョウの幼虫を使用した。山椒の葉についた青々としたナミアゲハの幼虫で、とても穏やかな子だった。子どもに何度も木を揺さぶられても抵抗せず、身体を強く触られてはじめて臭角を出し威嚇した。何度も触られ、疲れ果てたのか子どもたちから解放されたあとの食欲は凄まじかった。
研究者によると、葉っぱを食べ尽くさない限り同一の木に留まるとのことであったから、多少の不安はあったがそのままにして、帰宅した。
翌々日、あのナミアゲハの幼虫は姿を消していた。山椒の葉はまだ残っている。


「食べ終わらないまま姿を消すのは、蛹になる時だけだ」


幼虫がいないと嘆いていると、声をかけられた。どこかで蛹になっている、希望を胸に周囲を捜索してみたものの、どこにもそれらしき姿は見えなかった。その身を案じていたのが2週間前。


今日、羽化したてのナミアゲハの成虫が建物内で発見された。
外を求めて、上へ上へと目指す蝶を3m超えの虫取り網で捕獲してもらった時、幸福感に打ち震えた。
手に取ると狼狽えもがき、手中に収めると脚で手のひらの感触を確かめて脱出ルートを模索する様子。ちゃんと生きてるー!!!
嬉しくなって手に持ったままスキップしそうになったけれど我慢して、そのまま外へと急ぐ。外で手を広げれば、飛び立つ姿が……


飛び立った直後、落下した。


慌てふためきながら花の上に避難させたが、動く気配はない。仕事中だし、花の上に運んだんだからあとはなんとかなるはずと思うものの、後ろ髪をひかれ、どうしても戻ることが出来ない。そこに、蝶を捕獲してくれた研究者が通りかかった。
半泣きになりながら事情を説明すると(落下してしまった、持ち方が悪かったのかもしれない、まだ動かない)、少し笑って大丈夫と教えてくれた。


その予言通り、すぐさま蝶は飛び立った。


外は曇っているし風は湿度をしっかり含んで重苦しい空気だったけど、晴れ晴れとした心持ちになった。


はーーーよかった。生命は思っているよりもずっと強かで美しい。

しかしある人は手に持つ虫を全て「あ、なんかつぶれちゃった」とあっけからんと言う。そら大人が力いっぱい握るとそら大抵の虫はつぶれちゃいます。
諸行無常ですね。